こんにちは、歴女のharukaです。
この記事は、2023年最新版「本好きの40代ビジネスマン2,000人を対象としたアンケート」(全国書店連合協会)を実施した結果に基づき、おすすめの歴史本(戦国時代)をランキング形式でご紹介します。レビューも掲載していますので、参考にしてくださいね。
3位 覇王の家
2023年大河「どうする家康」の主人公
覇王の家|司馬遼太郎
「狸じじい」と謗られる苦労人家康の一生
徳川家康といえば、関ヶ原の戦い、大阪夏・冬の陣を経て、260年にも渡る徳川幕府を築いた太祖として有名ですが、一般的にあまり好ましいイメージを持たれてはいません。それは、彼が謀略の限りを尽くし豊臣家から天下を簒奪したことが大きな理由でしょう。
しかし、そんな彼でも若い頃から苦労に苦労を重ねた苦労人だったのです。生まれてすぐに今川家の人質となり、今川家が滅び当主となった後は隣国の脅威に晒されるばかりでなく家臣にも裏切られます。同盟者である織田信長からは酷使され、信長亡き後は耐えて秀吉に従いました。
普通、それだけ追い込まれれば猜疑心の塊となり、最悪の場合人格の崩壊や生死の問題に関わってくるでしょう。しかし、家康は違いました。忍耐に忍耐を重ね強い精神力と卓越した指導力で強固な地盤を固め、慎重かつ着実に天下取りのための布石を敷いていったのです。
その姿はまるで現代の中間管理職ではないでしょうか?上司の理不尽な要求に応え、部下からは突き上げられる。胃に穴が空きそうな忍耐の日々は苦痛そのものでしかありません。家康は一体どのようにしてそんな日々を耐えたのでしょうか?彼を深掘りすることによって私たちの生き方を見つめ直すきっかけになるはずです。
司馬遼の手になる徳川家康の伝記小説。まずは上巻を読んで、単純に事実としてしか知らなかった三方ヶ原の戦いや築山殿と信康の最期、織田信長との同盟と武田勝頼滅亡、本能寺の変後の脱出劇(プラス穴山梅雪の最期)といった史実の実相について、小説としての面白さを満喫しながら、実に多くを知ることができ有益でした。なお、最後の方では『へうげもの』でも読んだ「天下三肩衝」(銘初花、銘新田、銘楢柴)の話が出てきました(371~4頁)
家康公を英雄として書いてはいないが、信長・秀吉の時代をしたたかに生き抜き、さらにはそのつどキラリとひかる凄みも見せる家康を僕は心底カッコイイと思う。どんなに踏んずけられようが、バカにされようが、地味にずんずん進んでいく、本当にコワイ男はこんなやつだ。戦国最強のタフな男、最高です、家康公。
2位 関ヶ原
関ヶ原|司馬遼太郎
天下分け目の戦いの舞台裏
「三成に、過ぎたるものが二つある 島の左近と、佐和山の城」豊臣時代に街中で歌われていた流行歌です。佐和山城は琵琶湖畔を背にした佐和山に築かれた5層天守の巨城でした。城の正面となる大手門は旧中山道を臨む要衝であり、築城の天才と謳われた島左近が設計したことでも有名です。
この物語は、石田三成、島左近の主従を中心にして話が進んで行きますが、徳川家康が図り巡らす陰謀についても詳細に描かれています。家康はとことん嫌な奴として君臨しています。「覇王の家」を読んでようやく均衡が取れるくらい悪者です。傾く主家を支えようとする忠臣と、老獪な手腕で天下取りを目論む悪役の構図は勧善懲悪物の典型として、読者を三成贔屓にしていきます。しかし、単純に贔屓できない原因が三成の気質にあります。「真面目すぎる」、「優しすぎる」、「考えすぎる」現代人の生きづらさをそのまま生き写したような三成像には、共感も反発も覚えます。文官の三成は冷酷で軟弱だというイメージを持っていた私ですが、この物語を通じて三成の男気や友情、優しさを知ることができ、石田三成のイメージが変わりました。
何回か映画化・ドラマ化されているが、実際のところは映像化は無理だと思う。
この本の神髄は、石田三成・徳川家康という2人の人物を中心に様々な人々の思想・事情・企て・利害が絡み合いながら展開していく点にある。要は最高の「政治劇」なのだ。映画だとどうしても合戦描写に時間を割かれてそれどころではなくなるし、政治劇にするためには各人の背景や思想を詳しく見せなければならない。
刻々の場面に立ち会っているかのような臨場感、その息づかいまでもが感じられる超娯楽大作。
当時の経済、生活の様子も丹念に描写され、物語でありながらその時代背景を学ぶのにも役立つ。
人物がおもしろい。その述べ方が面白い。しばしの間この安土桃山、戦国の終わりにあそび、人について、権力について学ぶとしましょう。
1位 太閤記
太閤記|司馬遼太郎
日本史上最高の立身出世伝!秀吉の天下人への道
歴史上、天下人となった人には暗部や血生臭い印象が付いて回ります。日本初の武家社会を作り上げた源頼朝には弟義経殺しのイメージが強く、260年にも及ぶ長期政権の礎を築いた徳川家康は「狸ジジイ」と揶揄され陰湿な性格で知られています。(家康には家康なりの境遇があり情状酌量の余地はありますけどね)
しかし、豊臣秀吉に関しては、幾多の戦場を駆け巡り血生臭い経験がありながら、どこか明るいイメージを持たれている方が多いのではないでしょうか?同時代の織田信長や徳川家康との対比から、そのようなイメージが強調されるのかもしれませんが、日本史上、人心掌握術の才能だけで天下を獲ったのは秀吉だけです。猿顔だったことから信長に「猿」と呼ばれ、同僚からは蔑まれ、妬まれましたが、秀吉は腐ることなくむしろ猿顔を売りにしました。血生臭い時代にあって秀吉の愛嬌ある陽キャは、とても珍しかったと思います。
人の心のあり方を読む「人たらし」の天才である秀吉は、不遇な境遇に生まれながらも、あらゆる物事をポジティブに捉え、人間的な魅力と演出力で次々と名将たちを虜にし、ついに戦国の世を治め日本統一を果たします。今でも大阪の町で「太閤さん」と絶大な人気を誇る所以でしょう。
人間関係に悩む現代人にとって、人との付き合い方や心の有り様について教えてくれる、そんな一冊です。
司馬氏の戦国時代物の中でこれは秀吉の一代記という位置づけになるのだが、秀吉が絶頂期を迎えるところで司馬氏は筆を置いている。『関ケ原』で秀吉が死ぬ直前には触れているものの、その間がポッカリと欠落してしまっている。四国、九州と平定し北条討伐によって天下を統一するが、秀次切腹や文禄・慶長の役もあった頃だ。
省略するにはもったいないくらい、ネタには事欠かない。この本が世に出てから司馬氏が亡くなるまで30年近くあり、書こうと思えばできたが、それをしなかった。書けなかったのか、それとも書きたくなかったのか、それは今となっては分からない。
氏が生前のテレビインタビューで、ノモンハン事件について書こうとしたのだが、調べれば調べるほど人の醜さが嫌になり書けなかったと語っていたのを覚えている。氏が書かなかった欠落部分は、まさに秀吉の醜い部分が浮き彫りになっているところでもあり、書きたくなかったのかもしれないと思えてくる。
事実、ここで描かれる秀吉はキラキラと輝いており、下剋上を駆け上っていくエネルギーに満ちている。信長と秀吉の奇妙な関係も生き生きと描かれ、気分よく読み終えることが出来る。
皆様方のようにじょうずなレビューは無学な私には書けませんが、大変おもしろかったです。
無学でもおもしろいと思いましたので、「あ〜ぁもっと若いころ勉強しておけばよかったなぁ」とこころで泣いてます。
番外編 夏草の賦
夏草の賦|司馬遼太郎
四国統一の覇者!長宗我部元親の悲劇
時と場所を選べなかったのが彼の悲劇でした。英雄・豪傑が各地に湧き上がり、互いに覇を争っていた戦国の世にあって、四国や九州は蚊帳の外でした。長宗我部元親(1539−1599)は四国・土佐の一郡の領主でしかありませんでしたが、25年かけて四国統一を果たします。これが1580年の出来事です。当時は織田信長の全盛期ですので当然信長の無茶振りが入ります。
信長:土佐と阿波半国の領有を認めてやるから家臣になれ!
元親:俺が20年かけて頑張って領土を広げたんだ!お前が何かしたか?なんで何もしていないお前の言うことを聞かなくちゃいけないんだ?怒
信長:俺の言うことを聞かないなんて生意気な奴だ!そんなら攻め滅ぼしてやる!
…というわけで、信長軍団が大挙して押し寄せてくることになりました。しかし、幸か不幸か本能寺の変で信長が死んでしまったので、四国遠征は沙汰止みになり、元親は急死に一生を得ました。
しかし、信長の実質的な後継者となった豊臣秀吉によって攻め込まれ、最終的には土佐一国にまで領土を削られてしまいました。そして、その後の秀吉の九州遠征で更なる悲劇が待ち構えていたのです。
長宗我部元親は辺境の生まれを苦にせず、四国統一、全国統一という目標に向かって進んでいきました。その熱量はとてつもなく大きく、圧倒されてしまいます。その後、土佐に生まれ日本の歴史を変えた坂本龍馬にどこか通じるところがあります。龍馬好きの方にはぜひ読んでいただきたい一冊です。
土佐では江戸時代「上士」・「郷士」という峻烈な身分制度が存在しました。国替えによって土佐を拝領した山内一豊の家臣が「上士」、旧藩主・長宗我部家の家臣が「郷士」と呼ばれ、支配・被支配の関係が260年にわたって続き、幕末になって郷士階級の中から坂本龍馬や武市半平太などの英雄を輩出しました。
長宗我部元親が,長宗我部家を相続してから,四国をほぼ統一するまでの話が,上巻です。中央の歴史で言えば,織田信長が岐阜に進出した直後から本能寺の変の直前までの時代の話です。
主人公は元親ですが,妻の「菜々」の視点での記述も多く,菜々と元親の会話や,菜々の視点を使って元親を立体的に描いています。
菜々は,明智光秀の家老である斉藤利三の妹であるため,明智家の人々やその主家である織田家の人々が自然な形で登場します。
四国の物語ではあるものの,四国に閉じた一地方の物語になってしまうのを防ぎ,日本史の中に元親を位置づけて描くことに成功しています。脇道にそれての講釈や蘊蓄話が多すぎることもなく,テンポ良く進んでゆきます。
生れ落ちた地によって運命は決まってしまった。今はネットのおかげで情報はどこにいても手に入れられるようになった。しかし、都会と田舎の差は依然として残っている。いつの世も変わらないものなんだな。
まとめ
この記事では、アンケート調査結果を基に「40代が選ぶ歴史本ベスト3」をご紹介しましたが、いかがだったでしょうか?
今回ご紹介した本は、いずれも戦国時代について書かれたものです。戦乱の世、戦が常態化した時代にあっては先行きの見通しも立たず、誰もが不安を抱えていました。同時に実力次第で立身出世できる希望が残されていた時代でもありました。「戦う日常」や「先行きの不透明感」という点は現代との共通点ではないでしょうか?また、40代は中間管理職の割合が多く、日常的に強いストレスと戦っていらっしゃることでしょう。その点、家康、三成、秀吉も同様の苦労を味わっていますので、生き方のお手本として参考になる部分もあるはずです。
教科書では決して教えてくれない、私たちの道標となる先人たちの叡智を探究するために歴史本を紐解いてみませんか?そこには、結末だけでは知ることができなかった人生のドラマが描かれています。
最後まで読んでいただきましてありがとうございました。